2021年1月号『冬の血圧管理の話』
日本人の5人に1人が高血圧だと言われていますが、みなさんの血圧はどれくらいでしょうか。血圧は高いままにしておくと動脈硬化が進み、生命に関わる病気を引き起こす危険性がありますので日頃から管理をすることが大事です。
1 血圧とは
血圧は、血管の中を流れる血液が動脈の壁を押す圧力を指します。心臓が収縮して、全身に血液を送り出すときの最も高い血圧を上の血圧(収縮期血圧)と呼び、全身から戻った血液が心臓内にたまり、心臓が拡張しているときの最も低い血圧を下の血圧(拡張期血圧)といいます。
血圧は常に変動していて、緊張や興奮、激しい運動、急激な温度変化、飲みすぎ、睡眠不足、排便時、ストレスなどにより、一時的に高くなることがあります。ちなみに、高血圧は、最高血圧が140mmHg以上、最低血圧が90 mmHg以上で片方もしくは両方が該当した状態が目安です。
2 高血圧と動脈硬化
高血圧は常に血管に強い圧力がかかっている状態で、血管の壁はその圧力に対応して、しだいに厚く硬くなり、傷がつくとそこにコレステロールなどがたまり血管内が狭くなっていきます。その状態が動硬化です。血管内部が狭くなると、血圧がさらに上がってしまう悪循環に陥り、心筋梗塞や脳卒中などの病気を引き起こします。
3 冬に血圧管理が必要な理由
寒いと血管が収縮し、体温が逃げるのを防ぐ仕組みがあり、その収縮で血圧も上がります。
暖かい室内から寒い廊下やトイレに移動したり、寒い脱衣所で着替えた後、温かい湯船につかったりするなど、急激な温度変化によって血圧が大きく変動することで起きる健康被害をヒートショックと呼びます。ヒートショックで脳卒中や大動脈解離、心筋梗塞などを起こし、入浴中に倒れる方が多いので注意が必要です。脱衣所・浴室・トイレを温めておくことや、ゆっくりとお風呂から出るなど、血圧の乱高下を防ぐ工夫が大事です。
4 血圧を安定させるために、自分でできること
血圧は、年齢と共に上がりやすいものですが、個人差があって上がらない方もいます。100歳を過ぎても元気な方々の血圧を測った調査がありますが、高血圧は非常に少ないという結果だったそうです。血圧を適正に保てば、長生きへの道が近付いてくるといっても過言ではありません。
★血圧管理のための生活習慣改善のポイントは下記のとおりです。
①塩分を控える
塩分(ナトリウム)を摂り過ぎると血液の浸透圧を一定に保とうとして、血液中の水分が増えるため、体内を循環する血液量を増やします。このため、末梢血管の壁にかかる抵抗が高くなり、血圧を上げてしまうと考えられています。調理や食事で減塩を意識しましょう。
②肥満を解消する
肥満者は普通の体形の方と比べ、約2~3倍多く高血圧になるというデータがあります。体重を減らすだけでも、血圧は下がります。ちなみに体重を1㎏落とすと、上の血圧が2㎜Hg下がると言われています。
③運動をする
運動をすると、血圧を下げる作用がある血液中の物質が増加し、逆に血圧を上昇させる物質が減少するということが分かっています。
④野菜や果物を積極的に食べる
野菜や果物に多いカリウムは塩分(ナトリウム)を体外に出してくれる働きがあります。
職場の健康診断で、血圧の値が要治療となった方は、必ず医療機関を受診し、医師の診断を受けましょう。
参考資料
北海道心臓協会, 高血圧の予防と治療
田内 久,百寿者の秘密-不老長寿の夢に向けて,ポピュラーサイエンス
藤村 直子,冬場に多発温度差で起こるヒートショック,恩賜財団済生会ホームページ
家光素行, 高血圧症を改善するための運動,e-ヘルスネット