いばらき産保ニュース 第53号

発行日:2010/2/2
ホームページ:https://companyen.xsrv.jp/sanpo_center/
発  行:独立行政法人 労働者健康福祉機構
茨城産業保健推進センター 所長 小林 敏郎

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【新着情報】
【これから受講できるセミナー案内(無料)】
【センターからのお知らせ(お役立ち情報等)】
【メンタルヘルス対策支援センターの利用案内】
【コラム:水戸南町だより】

新着情報

昨年の自殺者3万2,753人

警察庁がまとめた自殺統計によると、昨年の自殺者は3万2,753人と前年より504人増え、 過去5番目となります。茨城県内では暫定で768人と前年より58名増えています。不況が色濃く影を落としているのでしょうか?
詳しくは↓
http://www.npa.go.jp/index.html

「うつ病」100万人を超す

うつ病患者が100万人を超え、この10年間で2.4倍に急増しています。 不況などの影響はもちろんですが、新規坑うつ薬の登場との関係を指摘する声も強くなっています。 安易な診断や処方を見直す動きも出つつある・・・

「漢方医から職場への処方箋」伊藤 隆

※当センターの産業保健相談員で、鹿島労災病院のメンタルヘルス・和漢診療センター長の伊藤隆先生が「労働安全衛生広報」 ((株)企業通信社)に現在投稿している原稿をご紹介いたします。 なお、転載に当たっては出版社の許可を得ています。また、センターのホームページにも掲載しています。

第2回うつ病と漢方(柴胡加竜骨牡蛎湯)~寝つきよくなり表情も明るく~

  1. 内科医はうつ病が苦手
    うつ病は気力低下、気分のよくうつを特徴とする精神疾患です。 症状としては、不安、焦燥、精神活動の低下、食欲低下、不眠症などを呈します。 最近の調査では、有病率は人口の1~2%、生涯有病率は3~7%とされています。 この病気は、内科などの一般診療医が見落としやすいと言われています。 内科を受診するうつ病患者の80%は、精神ではなく身体の不調を訴えてきます。 このためか、医師の48%がうつ病を見逃したとする報告があります。 日本の一般医は通常の疾患だけで手一杯で、うつ病の診療は苦手なのです。 一方、欧米でうつ病患者を診療しているのは一般医の9~20%であり、我が国の2~3倍になります。
  2. 治療
    この病気は「心の風邪」と呼ばれるように、ある時期ストレスから離れての安静期間が必要です。 そして、抗うつ薬の内服が大切です。 薬剤に対する反応については、報告では8週間の服薬で3分の2は改善に向かうようです。 治療予後はタイプによります。一時期落ち込んだ後に次第に回復していくタイプ(単極性うつ病)は最も予後が良く、 9割方治療に反応します。うつ状態だけでなく、そう状態も呈するタイプ(双極性うつ病)は病態に 応じた薬の調整が必要になります。神経症の傾向をもつタイプ(神経症うつ病)では治療が難しい場合が多くなります。 なりやすい病前性格には、真面目、完壁主義、周囲に対する気遣いが強いといった傾向があります。 最近は、我慢ができない、切れやすい、自己主張が強いなど、人格に問題があると思われる例が増えてきて、 うつ病が変わってきたと言われています。
  3. 当院の治療方針
    当和漢診療センターはメンタルヘルスセンター兼任のため、必ずしも漢方薬を希望していない方も受診されます。 東西どちらの治療を行うかについては、原則は患者さんの希望を尊重しています。 もちろん、病状によっては、漢方薬単独治療を希望されても、西洋薬の併用を勧めたり、 重症例では精神科医を紹介する場合もあります。
  4. 西洋薬の併用状況
    西洋薬の併用、他科他院との併診状況について調査してみました。うつ状態の患者さん(うつ病以外を含む)で 1ヶ月以上漢方治療できた104例中、漢方薬だけで治療していたのは24例、ほぼ4分の1でした。 ちなみに、他の医療機関と併診している方が2分の1、私から西洋薬を処方している方が4分の1でした。 大部分の医療機関では、西洋薬に漢方薬を併用する形で使用していますから、 漢方薬単独で治療している例が4分の1でも多い方だと思います。 このような施設は、これからは増えていくと期待しています。
  5. 漢方治療例
    漢方単独治療の具体例を紹介します。 症例は、70歳の女性です。主訴は、倦怠感と不眠です。10年前お子様が独立してから、 ずっと体がだるかったそうです。床に就いてから眠るまで30分かかり、朝早く目が覚めるようになりました。 3年前1人暮らしになった後は、少し驚くだけで眠れなくなりました。 高血圧にて内科通院中ですが、睡眠薬は飲みたくなく、漢方薬ならば服用してみようと思い、受診されました。 症状を問診すると、この他にも、腰から下が冷えて寒い、疲れやすい、体全体が重い、 物事に驚きやすい、些細なことが気になる―などに悩んでおられました。 重症例でないため、漢方薬単独治療をすることにしました。 身体所見は、身長140㎝、体重50㎏、血圧134/70mmHg。胸腹部に異常はありませんでした。 そこで、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)という漢方薬をエキス剤で処方しました。 エキス剤は煎じ薬から作った、インスタント珈琲のよな顆粒製剤です。 お湯に溶かして服用して頂きました。2週間後、だるさが減じてきました。 寝つきが良くなったのですが、朝眠い状態は、なお継続していました。 6週間後、午前2時に目覚めていたのが、午前5~6時まで睡眠が持続するようになりました。 服用すると気分が落ち着くため、その後2年間にわたって断続的に服用しています。 漢方単独治療の長所は、無理なく自然に回復していくことにあります。 抗うつ薬を用いると、気力はでてきたけれど気分は落ち込んだまま、 あるいはその反対であるなど、気力と気分がアンバランスな場合があります。 欠点は治療効果に個人差が大きいことです。 自殺の危険がある症例には通常の精神医学的な治療が必要で、漢方薬による治療は後回しにしなければいけません。
  6. 柴胡加竜骨牡蛎湯が効くタイプ(証)
    うつ状態に効く漢方薬は多数ありますが、今回はこの薬を紹介します。 中味は、柴胡(さいこ)、半夏(はんげ)、桂皮(けいひ)、茯苓(ぶくりょう)、黄ゴン(※草冠に今と書きます) (おうごん)、大棗(たいそう)、人参(にんじん)、竜骨(りゅうこつ)、牡蛎(ぼれい)、生姜(しょうぎょう)の十味です。 柴胡はセリ科サイコの根。 いらいらしている気分を抑えてくれます。竜骨は古代の馬の化石、牡蛎はカキの貝殻です。 どちらもカルシウムが主成分です。茯茶は、マツの木の根にできるサルノコシカケ科の菌類です。 これらはいずれも気分を静める作用を持っています。 誰にでも効くわけではありません。身体所見と精神症状については効くタイプがあります。 体格は肥満気味で便秘傾向の人が適応です。漢方では実証(じっしょう)といいます。 やせ気味の人、漢方でいう虚証(きょしょう)には別の薬になります。 虚証の人が実証の薬を飲むと、肝機能障害などの副作用を来たしやすくなりますから、ご注意ください。 精神症状としては、少しの物音でも目が覚めてしまうなど、驚きやすい傾向を持っているタイプです。 恐い夢を見る人が多いです。動悸しやすく、診察すると心下部、臍のあたりで腹部大動脈の拍動を認めることができます。 精神症状が同様でも、やせている人には桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)を用います。
  7. さいごに
    私たちの睡眠時間は加齢とともに短くなるものですが、眠れないイコール不眠症ではありません。 病気と言えるのは、不眠を苦悩するときです。そんな悩みの強いときには、遠慮なく産業医に相談してみましょう。 そして、抗うつ薬が嫌な人は漢方薬という手があることを検討してみてください。 

詳しくは↓
https://companyen.xsrv.jp/sanpo_center/info_document/oh/kenko/kenko_1

育児・介護休業法が変わります

育児・介護休業法が改正され、一部を除き平成22年6月30日から施行されます。 各事業所におかれましては、平成22年6月30日までに就業規則及び労使協定の整備が必要になります。 改正法に沿った規定の整備及び雇用管理を進めていただくため、茨城労働局雇用均等室では各地で説明会を開催する予定です。
※詳しくは茨城労働局雇用均等室まで(電話029-224-6288)

これから受講できるセミナー「2010年」

※ 先着順になりますので、お早めにお申込ください。
※ ご要望が多かった県南地区でのセミナーが多くなっています。セミナー会場をお間違えないようご注意ください。
※ 有料駐車場については参加者のご負担となりますので、ご了承ください。 できるだけ公共交通機関をご利用ください。

<平成22年2月分>

  • 2月9日(火)午後2時~午後4時 県南生涯学習センター小講義室2
    「改訂「心の問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」について」
    講師:武田繁夫
    ※日医認定(基礎・後期2、生涯・更新2)申請
    ※産業看護職実力アップ申請
    ※武田先生は「心の問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」の改訂に当たって、 その委員として手引きの改訂に直接参加していますので、 手引き改訂の経緯なども詳しくご説明いただけるのではないかと思います。ご期待ください。
  • 2月17日(水)午後2時~午後4時30分 県南生涯学習センター小講義室2
    「衛生管理者等スキルアップ研修会(Ⅱ)~リスクアセスメントの進め方~」
    講師:伊藤進一
    ※このシリーズの2回目、県南地区での開催です。県南地区の皆さんご参加をお待ちしています。
  • 2月18日(木)午後6時30分~午後8時30分 県南生涯学習センター小講義室2
    「復職支援の現場から~うつのタイプ別の対応について」
    講師:吉野聡
    ※日医認定(基礎・後期2、生涯・専門2)申請
    ※産業看護職実力アップ申請
    ※「え、これって本当にうつなの?ちょっと違うんじゃないの」という言葉をよく聞くようになりました。 講師の吉野先生に「うつ」のタイプ別にどのような対応をすべきかを分かりやすく解説していただきます。
    ※講師吉野先生の著書です。ご参考にしてください。

    1. 「それってホントに「うつ」?―間違いだらけの企業の「職場うつ」対策」(講談社プラスアルファ新書)
    2. 「現役精神科産業医が教える「うつ」からの職場復帰のポイント」(秀和システム)
    3. 「精神科産業医が明かす職場のメンタルヘルスの正しい知識」(日本法令)
  • 2月25日(木)午後2時~午後4時茨城県医師会館4階会議室
    「企業における喫煙対策と禁煙支援について」
    講師:平間敬文
    ※日医認定(基礎・後期2、生涯・専門2)申請
    ※産業看護職実力アップ申請
    ※長く禁煙対策を研究している禁煙対策の権威である平間先生のセミナーです。
    禁煙対策の難しさは皆さんが感じていると思います。

<平成22年3月分>

  • 3月2日(火)午後2時~午後4時住友生命水戸ビル11階会議室
    「独り職場の駆け出し看護職勉強会(Ⅲ)~自前で行う傾聴教育の紹介~」
    講師:起由美
    ※このシリーズも今年度最終回です。産業看護職に対する数少ないセミナーです。
    看護職の皆さんのご参加をお待ちしています。
  • 3月4日(木)午後6時~午後8時 住友生命水戸ビル11階会議室
    「産業保健懇談会~労働行政について~」
    講師:木下正人
    ※日医認定(基礎・後期2、生涯・更新2)申請
    ※産業看護職実力アップ申請
    ※講師は茨城労働局の労働基準部長の木下部長です。労働衛生行政について講演を頂き、 会場の方々との意見交換も行う予定です。皆さんが参加しやすいよう夜間に設定いたしました。
  • 3月12日(金)午後2時~午後4時しもだて地域交流センター「アルテリオ」
    「茨城・栃木共同セミナー~改正労働基準法と過重労働対策について~」
    講師:小林淳
    ※日医認定(基礎・後期2、生涯・専門2)申請
    ※講師は栃木産業保健推進センターの相談員の小林先生です。茨城と栃木がコラボで計画したセミナーです。
    県西地区でのセミナーは少ないので、ぜひ、県西地区の方はご参加ください。
  • 3月16日(火)午後2時~午後4時30分 県南生涯学習センター小講義室2
    「衛生管理者等スキルアップ研修会(Ⅲ)~健康診断の実施と健康管理~」
    講師:早川幸子
    ※このシリーズの2回目、県南地区での開催です。県南地区の皆さんご参加をお待ちしています。

【注意】
「日医認定」とあるのは、日本医師会認定産業医制度の単位認定研修です。
「実力アップ」とあるのは、日本産業衛生学会産業看護職継続教育実力アップコース認定です。
申請中、又は申請予定も含みます。また、「予定」とあるのは、変更されることがあります。

センターからのお知らせ(お役立ち情報等)

『「いばらき産保ニュース」おしらせ版』の発行について

本年1月から『「いばらき産保ニュース」おしらせ版』を発行することにしました。 「産保いばらき」が廃刊になり、ホームページとメールマガジン中心の情報となっていましたので、 できるだけ「紙媒体」であらゆる機会に配布したいということで発行をすることにいたしました。 「低コスト」が基本なので、「手作り」の「ちらし」になりますが、ぜひ、ご覧ください。

  • A4サイズの両面印刷
  • 発行時期:随時
  • 配布方法:センター窓口での配布、セミナーでの配布、産保21と一緒に発送等
  • 内容:センターからのおしらせ、産業保健セミナーのご案内などの情報
深夜業に従事する方へ「自発的健康診断受診支援助成金利用のご案内」

深夜業に従事している方で、ご自身の健康に不安を感じたら健康診断を受けましょう。
自発的健康診断の一部の費用が援助されています。
<助成金支給対象者>

  1. 常時使用される労働者
  2. 自発的健康診断を受診する日前6か月の間に1ヶ月あたり4回以上(過去6か月で合計 24回以上)深夜業に従事した方
  3. 今年度にこの助成金の支給を受けた事がない方

詳しくは↓
https://companyen.xsrv.jp/sanpo_center/info_document/various/subsidy

メンタルヘルス対策支援センターの利用案内

「メンタルヘルス対策支援センター」では、対面、電話、ファックス、 メールによりメンタルヘルス不調の予防から職場復帰までのメンタルヘルス全般 についての相談、問い合わせに応じています。
現在、3名のメンタルヘルス対策促進員が 事業場を訪問して制度の周知、助言を行っています。
メンタルヘルス不調者の対応をどうしたらよいか、社内スタッフ・従業員への 教育・研修をどうしたら良いか、職場復帰支援プログラムはどのように作れば良いのかなど、 メンタルヘルス全般についてのご相談に応じています。
費用は無料です。

コラム水戸南町だより

▼風邪でダウンしました。継続して運動しているので、めったに風邪はひきませんが、 久し振りに風邪をひき、しかも、3週間以上も長引いてしまいました。 インフルエンザではありませんでしたが、咳が止まらず、一時は、あまりの咳で夜も眠れない状態でした。 一度の風邪で3回も病院に行くのは初めての経験です。 おかげさまで、何とか回復しつつありますが、まだ完全な状態とはほぼ遠い状態です。皆さんもご注意ください。

▼予定では1月末にメールマガジンの発行をする予定でしたが、 上記の理由で発行が遅れましたことをお詫び申し上げます。体調不十分で誤字等も多いかもしれませんが、ご了承ください。

▼現在、平成22年度の上半期のセミナーを中心に計画を作成しています。 講師の先生方と打合せをしながら、皆さんのお役に立つようなセミナーを計画できればと考えながら勧めています。 このようなセミナーをやって欲しいという具体的なご要望がありましたら、メールでも結構ですし、 ホームページの相談のコーナーからでも結構ですのでご意見をいただけると助かります。

▼1月のマラソン大会の参加報告です。地元の「牛久シティーマラソン」では1秒差で年代別の入賞を逃し、 「勝田全国マラソン」は風邪で棄権となりました。ちょっと、暗い報告で申し訳ありません。 2月は「東京マラソン」があるので、月末までには体調を整え、 しっかりトレーニングをして明るいご報告ができるよう頑張ります・・・・


次回の第54号は、平成22年2月下旬配信予定です。
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