Q3-iv-2.
エポキシ樹脂を使用している職場があります。当社では、以前から、エポキシ樹脂取扱い作業者に対する健康診断を行っておりますが、法的にも健康診断は必要なのでしょうか?
A3-iv-2.
健康診断については、安全衛生法やじん肺法など法律で実施が定めているもののほか、行政指導(昭和31年5月18日付け基発第308号「特殊健康診断指導指針について」ほか個別の通達)により特殊健康診断を実施するよう勧奨されている業務が約30種類ほどありますが、「エポキシ樹脂」の取扱い業務は、これらには含まれておりません。
しかし、その一方で、エポキシ樹脂取扱者に対する健康診断を実施しているケースが見られますが、その理由は、以下によるものと思われます。
エポキシ樹脂は、分子構造の相違や分子量の大小によりビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルアミン型等様々なタイプがありますが、1957年頃よりエポキシ樹脂の経皮感作性が報告されており、また呼吸器への障害も1950年ごろより知られていました。
これらエポキシ樹脂のなかでは、ビスフェノールA型が最も汎用されていることから、接触皮膚炎の報告はビスフェノールA型によるものが多いようですが、ビスフェノールF型エポキシ樹脂による接触皮膚炎例も報告されています。また、エポキシ樹脂を硬化させる際に加える硬化剤にも刺激性、感作性毒性があり、硬化剤による接触皮膚炎や肝障害も報告されています。
なお、エポキシ樹脂硬化剤(公表名 6-フェニル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン・ホルムアルデヒド縮合物と1,3-フェニレンビス(メチルアミン)・アクリロニトリル付加物の反応生成物)については、厚生労働省の「新規化学物質の有害性の調査結果に関する学識経験者の意見について(報告)」の中で、微生物を用いる変異原性試験の結果、弱い変異原性が認められるとされた化学物質一覧に含まれており、エポキシ樹脂硬化剤として使用される4‐クロロ‐オルト‐フェニレンジアミンについては、IARCでグループ2b(ヒトに対して発がん性があるかもしれない)に分類されているとしています。
このように、エポキシ樹脂については、以前から有害性が指摘されていたものですが、さらに平成15年8月11日、厚生労働省労働基準局長から「化学物質等による眼・皮膚障害防止対策の徹底について」(基発第0811001号)という通達が出されました。
通達では、安衛則第594条に規定する皮膚に障害を与える物として、ビスフェノールA型及びF型エポキシ樹脂を指定し、これについては、眼・皮膚の障害の発生を防止するために適切な保護具の使用等を徹底するとともに、「眼又は皮膚に障害を与える化学物質等を取り扱う業務に従事する労働者については、当該化学物質に係る労働安全衛生法第66条第2項に基づく健康診断を受診している者を除き、事業者は安衛則第44条又は第45条に基づく定期健康診断実施の際、当該労働者がばく露するおそれのある化学物質等の名称及びその有害作用、ばく露することによって生じる症状・障害等に関する情報を化学物質等安全データシート(MSDS)等を用いて当該健康診断を行う医師に通知の上、自覚症状及び他覚症状の有無の検査にあわせて眼又は皮膚の障害の有無の確認を求めることが望ましいこと。」としています。
つまり、改めて特殊健康診断を実施する必要はありませんが、定期健康診断における自覚症状及び他覚症状の有無の検査の際に、エポキシ樹脂使用による眼・皮膚の障害の有無を確認するのが望ましいということです。