Q2-3.
現在、労災により療養補償給付と休業補償給付を受けております。もうじき定年を迎えますが、それまでに仕事に復帰できる見込みはありません。
まだしばらくの間、療養・休業が必要となる見込みですが、退職後も労災保険給付は受けられるでしょうか。
それとも、療養中の定年退職は解雇制限に抵触して無効となるのでしょうか。
A2-3.
定年退職後は当然賃金を受けることができなくなり、休業損害が生じないため、補償を受けることができないのではないかとご心配なのではないかと思います。
しかし、療養補償給付が退職後は支給されないとなると、業務上の事由により負傷し療養しているのにもかかわらず、治療を受けられないという不合理なことになります。
また負傷していなければ、定年により退職した後も、他の事業場に再就職し賃金を得ることもできたはずですから、この点からも矛盾があります。
従いまして、たとえ退職の理由により使用者との間に雇用関係がなくなったとしても、支給事由が存在する限り保険給付を受けることができますので、ご安心ください。
このことは、労働基準法第83条及び労災保険法第12条の5で「補償を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない」と規定されています。
以上のように、業務上の事故に対する補償は雇用関係の存続とは別に考えられることになります。
次に、解雇制限規定についてです。
労働基準法第19条は「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間は・・・、解雇してはならない。」と定めています。
しかしここで禁止しているのは、使用者による一方的な労働契約の解約の意思表示である「解雇」であり、労働者側からする任意退職や労働契約に期間の定めがある場合の期間満了による労働契約の終了、定年等、解雇以外の事由による労働契約の解消をも禁止しているわけではありません。
但し、一応定年年齢は定めてはいても、慣例として定年年齢を延長していたり、あるいは嘱託として再雇用したりしている場合ですと、若干事情は異なります。
こうした場合、当然に従業員は引き続き雇用されることを期待するようになりますから、あくまでも「定年に達した場合に当然労働関係が消滅する慣行となっていて、それを従業員に徹底させる措置をとっている場合」(昭26年8月9日基収第3388号)には、解雇の問題を生ぜず、したがってまた法第19条の問題も生じないということです。