漢方医から職場への処方箋

労働者健康福祉機構 鹿島労災病院
メンタルヘルス・和漢診療センター長 伊藤 隆

漢方医から職場への処方箋(1)  
漢方医から職場への処方箋(3)

目次

  1. 花粉症の漢方(麻黄-まおう-)
  2. 便と便秘(~大黄、芒硝、加味逍遥散~(だいおう、ぼうしょう、かみしょうようさん))
  3. 水毒(すいどく)と五苓散(ごれいさん)
  4. 頭痛の漢方薬
  5. みかんを用いた漢方薬(~陳皮と枳実~)

⑥花粉症の漢方(麻黄-まおう-) 
~西洋薬より効くケースも多く

1)はじめに

花粉症の季節です。今年は飛散量が少ないと聞いておりますが、予想が的中してほしいものです。
治療に用いる抗アレルギー薬は随分と進歩してきました。 症状が発現する数週間前から服用すべきとされていますが、 最近は症状出現後に服用しても結構効くものです。 しかし、服薬後の眠気に困る方や症状を抑えきれない方は、なお少なくありません。
副腎皮質ホルモン薬は吸入薬で効けばよいのですが、 経口薬になると作用が全身に及びます。 春の短期間とはいえ、副作用が気になる薬はできれば避けたいところです。
花粉症は漢方薬で治療することができます。今回は漢方専門医が用いる薬を紹介いたしましょう。

2)麻黄(まおう)

漢方薬は複数の生薬を組み合わせて用いますが、 最も強力な抗アレルギー作用を持っている生薬が麻黄です。 箒の先のような細い青い茎を用います。
主成分はエフェドリンです。 明治維新まもなくの我が日本で、長井長義博士が発見したことでよく知られています。 エフェドリンは交感神経を刺激し、気管支を拡張し、咳止めにも用いられます。 発見から100年以上たった現在もなお、医薬品として用いられています。 ノーベル賞に相当する研究と言ってよいでしょう。 また、プソイドエフェドリンは解熱鎮痛作用があります。 そして、麻黄のエキスには抗アレルギー作用のあることも報告されています。麻黄だけで花粉症も喘息も治療が可能なのです。
しかし、麻黄をそのまま用いますと副作用があります。 交感神経を刺激しますので、動悸、不眠、食欲低下、ときには尿閉をきたすこともあります。 漢方医学では麻黄を単独で用いることはありません。 桂皮、甘草、生姜などの生薬と一緒に煎じることで、 その副作用を軽減させる工夫がなされています。 麻黄の使用に際しては漢方医学的に診察しますが、 体の強さ(虚実、きょじつ)を脈の緊張等で推し量って、 麻黄は実の人には多めに、虚の人には少なめに用いることになっています。

3)甘草(かんぞう)

甘味料として世界中で用いられています。 醤油、ガム、飴の大部分で使用されています。 漢方薬では味を整えるよりも、副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)の作用を強める作用を期待して用いられています。 副作用として、長期服用により血圧上昇、浮腫、低カリウム血症をきたすことがあります。

4)試服の勧め

漢方薬に長期服用しなければ効かないイメージがあるのは、慢性疾患に用いる機会が多いからです。 急性疾患である花粉症やかぜ症候群では効果は1服でわかります。
もちろん、薬の効き方には個人差があります。 漢方薬だけでよい人、抗アレルギー薬の併用が必要な人、いろいろです。 そこで、筆者の工夫ですが、1服服用して様子をみることをお勧めしています。 服用後30分様子をみて鼻炎症状が落ち着いてくるようであれば、漢方薬だけで治療できます。 試服で治まりそうにないときに抗アレルギー薬を用いています。 漢方薬と併用すると、治療効果はいっそう増します。 動悸などの副作用も大体1服目で出現します。そのときは処方を変更するのです。

5)漢方薬

1 小青竜湯(しょうせいりゅうとう)

小青竜湯

構成生薬は麻黄、芍薬(しゃくやく)、五味子(ごみし)、乾姜(かんきょう)、 甘草、細辛(さいしん)、桂皮(けいひ)、半夏(はんげ)です。 麻黄、乾姜、細辛には、温めて水を去る作用があります。五味子、半夏は顔面の充血を改善します。
最もよく知られた漢方薬です。虚実中間の人に用います。麻黄の量は3g/日でやや少なめです。 アレルギー性鼻炎、喘息にも用いることができます。 この薬の適応は、水様の鼻水のでるタイプです。痰も水様透明です。 膿のような濃い黄色い鼻汁や痰には細菌感染の可能性があり、抗生物質が必要です。 お腹をたたくとぽちゃんぽちゃんと音がします(胃部振水音)。冷えやすく、蒼い顔色をしています。
通年性アレルギー患者に対する臨床効果が検討され、偽薬に対して明らかに優れた効果が立証されています。

2 越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)

構成生薬は麻黄、石膏(せっこう)、生姜(しょうきょう)、甘草、朮(じゅつ)、大棗(たいそう)です。 石膏は甘草とともに炎症を抑えます。麻黄、朮は水を去ります。生姜、大棗は胃を守ります。
鼻炎症状のより激しいタイプに用います。 実の人が適応です。 麻黄の量は6g/日と多量であるため、服用後動悸を覚えることもあります。 鼻粘膜が腫脹して1日中鼻水で目がくしゃくしゃの状態にも一定程度有効です。
一例紹介

ここで1例を紹介いたしましょう。
52歳、女性です。2年前の春から花粉症の症状が悪化してきました。 Ⅹ年2月中旬よりくしゃみ、鼻水が始まりました。 合計4種類の抗アレルギー薬、ステロイドと抗アレルギー薬の点鼻薬、抗アレルギー点眼薬を用いていますが、 症状が一向に治まりません。3月中旬初めて当センターを受診されました。首よりも肩がひどくこるそうです。 くしゃみ鼻水は1日中続き、マスクを片時もはずしていられません。
身長155cm。体重50kg。脈の緊張を強く触れました。 舌に歯の痕があり、むくんでいました。また足にも浮腫があり、実の水毒と診断しました。
症状がひどいため、漢方薬でどれだけ効くものか試服して頂きました。 越婢加朮湯エキス2回分をお湯約50mlに溶かして服用させました。 すると30分後、詰まっていた左鼻がすっと通りました。 そこで同エキス剤だけで治療しました。 2日までは服用するたびに軽度の頭痛を覚えましたが、鼻炎症状は軽快していきました。 6日後には調子よくマスクをはずすことができました。 20日後、無症状となり休薬しました。 翌年3月、花粉症症状のため、再診されましたが、同薬の2週間服用にて軽快しました。
筆者は15年前までは花粉症には小青竜湯を第一に用いてきましたが、 最近は越婢加朮湯をよく用いています。 用いる漢方薬には地域差もありましょうが、 最近は花粉症の症状がより激しくなってきている印象があります。

3 麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)

構成生薬は、麻黄、附子(ぶし)、細辛です。麻黄の量は3g/日と少なめです。
附子は最も温める作用の強い薬ですが、劇薬指定されており、医師の処方箋が必要です。 適応例では冷えが強く、小青竜湯以上に冷え冷えとした蒼い顔色をしています。 高齢者、体力消耗した例が適応です。使用頻度は前二者よりは少ないようです。
かぜ薬としても用いますが、そのときには咽痛と寒気を目標に用います。

6)いつまで服用するか

薬の服用は症状のある時期だけでよいはずです。 季節の少し前から服用するのが理想的ですが、症状が発現してからでも効きます。 症状の軽い時期に始めることが大切です。 また漢方薬は多成分系の薬剤ですので、別の病気の治療目的で服用していたら、 花粉症が軽く済んでしまったケースはよく聞く話です。
服用していた漢方薬に抗アレルギー作用のある薬が含まれていたのでしょう。
ただし、通年性に症状のでる方は花粉ではなくて家ダニなどが原因と思われます。
アレルギーに詳しい医師に相談してください。

7)さいごに

今回は花粉症に用いる漢方薬をご紹介いたしました。 一般薬店で市販されている漢方薬は医療用に比較して濃度が薄くなっていますが、それなりに有効です。 市販薬が無効であれば、お近くの漢方専門医にご相談ください。 ご自身の体質にあった漢方薬を一度見つけられますと、翌年もその同じ薬が効いて、持薬にすることができます。 これは花粉症に限らないことです。

⑦便と便秘
(~大黄、芒硝、加味逍遥散~(だいおう、ぼうしょう、かみしょうようさん)

1)はじめに

体調の善し悪しを判断する指標は沢山ありますが、便はそのうちで最も優れた指標です。 赤ちゃんは風邪などで体調を悪化させることが度々ですが、回復するときには決まって形のよい便がでます。 皆さんもお酒を飲み過ぎたりして、便の形や色に変化を生じた経験があるでしょう?
今日は便のお話です。汚ない!なんておっしゃってはいけません。健康にはとても重要なお話なのです。

2)健康的な便

健康的な便とはどういうものでしょうか?医学書にはほとんど書いてありません。病気の本ですからね。
養生に関する書物には「1日1~2回、特に朝にある。」「便意を催してから、比較的苦労せずに排便できる。」 「柔らかくて香ばしく、形はバナナ状。」「排便後に尻を拭く紙が殆ど必要ない。」などと書いてあります。
このような便のときが最も健康的ではないでしょうか。

3)便秘とは

現代医学では大便は毎日なくてもよいことになっています。 3日に1回くらいでも何の症状もない場合は便秘とは言いません。 数日以上排便がなく、かつ排便間隔が不規則になって始めて便秘と呼ばれます。 多くの便秘例では、多少なりとも腹部膨満感、不快感、下腹部痛を自覚しています。 消化器症状だけでなく、頭痛、めまいを呈する場合もあります。
症状がないと言う人でも、漢方医が診察すると、 頭痛、冷え症、いらいらしやすい等の自律神経失調様症状をもっていることが少なくありません。

4)排便は朝が自然

胃結腸反射をご存知でしょうか。 食事が胃に入ると神経反射で排便が促進されるのです。 この反射は朝が最も起きやすいとされています。 胃袋は一晩空っぽになった後ですので、刺激になるのでしょう。 また自律神経のバランスからいうと、人間は午前中副交感神経優位で排便しやすく、 午後は交感神経優位で活動に適しているそうです。午後に下剤を飲んで排便しようとするのは、 自律神経のバランスに反しますので、効きにくい可能性があります。

5)排便を習慣づける

便秘は習慣です。朝排便する余裕のない人が便秘になります。主婦は朝トイレに入る時間がありません。 便意を催しても夫や子供の食事の準備、後片づけ、掃除等をしている間に便意は消失、排便の機会が失われ、便秘になります。 すると下剤を服用する。量を増やしていく。飲まないと排便できなくなる。まさに悪循環です。
多くの便秘例は便意がないとトイレに行きません。悪しき習慣が身についています。 それではいつまでも下剤から卒業できません。便意がなくても朝は力んでみましょう。

  1. 毎朝コップ一杯の水を飲みましょう。便意がなくても5分間トイレで力んでください。 忙しくて時間がとれない方は5分早起きして、その時間で力む時間を作ってください。
  2. 運動をしましょう。歩くことから始めましょう。歩けない方もできるだけ腹筋を動かすようにしてください。食物繊維の摂取もこころがけてください。 あなたが数十年かかって作った習慣です。2~3日試みて上手くいかなくてもあきらめてはいけません。日常生活を変えるのですから、容易ではないはずです。気長に続けてみてください。

すでに下剤を長く服用してきた方は、急に休薬しても上手くいかない可能性があります。 医師の指導の下、下剤を減量しながら行ってください。 他の西洋薬の副作用で便秘している方については、担当医との相談が必須です。

6)漢方治療の意義

漢方薬は単なる下剤ではありません。理論があります。
瀉下作用を有する生薬は沢山ありますが、その中で最も用いられているのが大黄(だいおう)です。 その理由は瀉下作用以外の作用にあるようです。 すなわち、精神を安定する作用、血液のめぐりをよくする作用、内毒素を有する細菌を腸管から洗い流す作用など、 大黄は多くの作用を持っているのです。
便秘すると、体をめぐる気が下半身で妨げられ上半身に滞ります。 すると頭部などの上半身の痛みや熱感が悪化しやすくなります。 排便が毎日きちんとなされていると、気のめぐりが良くなり、様々な症状を改善することができます。
顔面に皮疹の著しいアトピー性皮膚炎の患者さんで、便秘している方がいたら、 是非便通を促してあげてください。それだけで顔の赤味が改善する可能性があります。
一般に、毎日便通をつけることで体調が改善される例はとても多いです。 便秘しやすい方は、毎朝1回排便がある、それだけで一日を爽やかにすごせます。

7)通常の下剤と漢方薬の比較

下剤は数種類ありますが、頻用されているものとしては刺激性下剤と浸透圧性下剤があります。 刺激性下剤としては、大黄、センナ、アロエなどがあります。腸管を化学的に刺激して蠕動を亢進させます。 腹痛をきたしやすい傾向があります。浸透圧性下剤の代表はマグネシウム塩などの塩類下剤です。 大腸検査前に服用するマグコロール、ニフレックもこの部類です。 腸粘膜が半透膜なので、浸透圧を利用して腸内に水を多量に引き、腸の蠕動運動を亢進させます。
漢方薬は数種類の生薬から構成されていますが、瀉下作用の強さから3段階に分けられます。 鍵となるのは、刺激性下剤である大黄と、浸透圧性下剤である芒硝(ぼうしょう、硫酸マグネシウム)の二つの生薬です。 瀉下作用は、大黄と芒硝の両方を含む薬が最も強く、次いで大黄だけを含む薬、大黄も芒硝も入らない薬、の順になります。
瀉下作用の強さが明確になっているのは漢方薬の特徴です。 頑固な便秘には大黄と芒硝の両方を含む薬を用います。反対に下剤に弱い人には大黄も芒硝も使わない薬にします。

8)症例

西洋薬による治療が上手くいかず、漢方薬で改善した便秘と腹満の一例をお示ししましょう。
60歳、女性です。20歳代から便秘、腹満、腹痛をくりかえしてきました。 下剤を服用すると腹が痛くなるので、あまり服用しないように気をつけています。 50歳より顔面に熱感がきて、大汗をかきます。足が冷え、毎年10月からあんかを手放すことができません。 友人の勧めで、9月中旬に受診されました。症状を伺いますと、朝早く目が覚める。暑がりで寒がり。 熱くなったり寒くなったりと更年期症候群と考えられました。
身長155cm。体重55kg。腹の緊張は中等度より弱と少し虚証でした。
加味逍遥散(かみしょうようさん)エキスを朝夕1包ずつ食前に服用していただきました。 数日の服薬で便通は毎日でるようになり、腹満は大いに改善しました。汗も減りました。
加味逍遥散は更年期障害の薬として有名な漢方薬ですが、月経障害、うつ気分にも有効です。 構成生薬の当帰(とうき)などに含まれる脂肪が、腸管の蠕動を刺激して穏やかに便通を促進します。
大黄などの刺激性下剤では腹痛をきたしやすい方(虚証)に適したお薬です。

9)最後に

「快食、快眠、快便」とはよくぞ言ったもの、健康の基本ですね。 あなたの今朝の便はいかがでしたか?皆様のご健康を願っております。

【参考文献】吉利和:内科診断学、P.263,金芳堂、東京、1978.

⑧水毒(すいどく)と五苓散(ごれいさん)

はじめに

朝起きたときに顔がむくんだり、立ち仕事が続くと足がむくんだりしませんか。
漢方薬は利尿薬とは違った利き方で「水」の分布を調整します。 水毒(あるいは水滞)は身体各部の水がうまく巡っていない病態を表わします。

五苓散(ごれいさん)

水毒に対する代表的治療薬である五苓散は、むくみだけでなく、 頭痛、めまい、下痢(水様下痢)、嘔吐(水様嘔吐)と種々の症状で「水」の関与した病態に用います。 とくに口渇、尿不利、自汗のうち二つの症状がある症例はよく効くとされています。 西洋の利尿薬と異なるところは、必ずしも尿量を増やさずに、水をとる作用にあります。 この作用は西洋医学のどの薬にもない、誠にユニークなものです。

構成生薬

茯苓(ぶくりょう)、猪苓(ちょれい)、朮(じゅつ)、沢瀉(たくしゃ)、桂皮(けいひ)の五つです。
茯苓はマツホドという、松の木の根などに寄生するサルノコシカケ科の菌核です。 その存在は地面の上からは見えません。先を尖らしたステッキ様の金属棒を、松の木の根周囲の地面をグサグサと刺していき、 当たったときの手応えを得て、掘り出します。これを「茯苓突き」といいます。匠の技です。
猪苓もチョレイマイタケというサルノコシカケ科の菌核です。 ちなみに中国語の猪は豚のことです。猪苓の名称は豚の糞あるいは陰嚢に由来する説があります。
沢瀉はサジオモダカという水草の根です。ここまでの三生薬の成育環境はいずれも水、湿気の多いところですので、 古人は最初から利水作用があると狙って使い始めたのではないでしょうか。
朮はキク科オケラの根茎で、若芽は山菜になります。 湿気をとり、カビを防ぐ効果があるので、かつては倉庫内で焚いたりしました。 オケラ祭り(朮祭)は京都八坂神社で大晦日から元旦にかけて行う神事で、朮を混じえたかがり火を焚きます。
桂皮はシナモンです。これは利水薬ではなく、解熱、鎮痛、鎮静等の作用が目的です。

むくみと利水

むくみは水毒の重要な症状のひとつです。
現代医学の治療の基本は水の出入りをマイナスにすることです。 入る水として、飲水量を減らします。体内では塩には水が伴いますので、 塩分摂取の多い方は、水をそれだけ多く飲んでいるのと同じことになります。
日本人の塩分摂取量の多さは高血圧の原因としてもよく指摘されています。 我々の塩分量1日あたり11~13gはアメリカの8~10gより多く、ヨーロッパの5~6gの2倍に相当します。 厚労省の目標は10g未満です。 日本食品標準成分表によれば、塩分量は梅干し1個10gで2g、ラーメン4g、みそラーメン/月見そば6gです。皆さんはいかがでしょうか。 加工食品、外食が多い人は塩分に注意する必要があります。
水を出す方法としては、利尿薬があります。 これは医師が処方する薬です。 最もよく用いられているフロセミドは強力な利尿作用を有しますが、むくみをとる薬としては限界もあります。
複数のダムを有する川で説明してみましょう。 フロセミドは腎臓だけに働きます。つまり最下流のダムの流出量だけを増やすのです。 より上流側のダムには作用しません。 したがって、上流において水の停滞が起こっている場合には、その効果は少ないのです。 手足や顔の局所的なむくみは必ずしも利尿薬ではとれません。 弾性ストッキングの着用、最近話題のリンパマッサージなどはこの停滞を物理的な刺激でめぐらすことを目的としています。 五苓散はこのようなむくみを一定程度改善することができます。 腎臓だけでなく、うっ滞している局所の水を巡らす作用があるのです。
さらに五苓散は水様下痢のときには下痢を止め、嘔吐の多いときは嘔吐を止めて、尿を増やしてくれます。 肝硬変による腹水が減少した例も少数ながら報告されています。
反対に脱水の症例に用いても尿は増えません。 この点、脱水の症例に対しても尿を増やすことができるフロセミドとはまことに対照的です。 尿を無理矢理増やすことはしないのです。
なお、心不全など心機能が低下しているときの服用は必ず医師の指示に従ってください。

頭痛

水毒の症状はむくみ以外にもあります。一部の頭痛は水毒と関係があるようです。
例えば、むくみやすい方の頭痛に五苓散は有効です。症例を提示いたします。
60歳女性の方です。
頭痛は15歳から始まりました。外出時には必ず鎮痛薬を持参しました。 30歳代後半には、大病院で月経が終わる頃にはよくなるよと慰められましたが、結局持続しました。 40歳過ぎには鎮痛薬を毎日1~2回服用していました。車で1時間以上かけて当院を受診されました。酒も喫煙もされません。
症状を尋ねますと、五苓散の適応を示唆する自汗傾向(首から上に)、口渇を有していました。 身長150cm、体重55kg、血圧120/80mmHg。舌を診ると歯の痕(あと)があり、下肢にはむくみがあり、水毒は明らかでした。
この方には五苓散を煎じ薬で処方しました。 3週後、めまい嘔気が出て点滴を受けましたが、頭痛そのものの程度は改善してきました。 6週後、頭痛がきても鎮痛薬を服用せずに軽快する場合がでてきました。 この方は通算2年間この薬を服用し続けて、頭痛と鎮痛薬から卒業していかれました。
筆者の経験では、勤労女性の頭痛にはこの五苓散が効くタイプが最も多いようです。 むくみやすい方は一度試してみてはいかがでしょうか。

周期性嘔吐症

4~6歳に多い病気です。元気な子供が突然ぐったりして、激しい嘔吐をくりかえします。 この発件は1日に数回から数十回に及びます。 通常は安静にて様子をみますが、脱水が強い、あるいは胆汁様のものを嘔吐する重症例には入院加療が必要です。 アセトン血性嘔吐症、自家中毒症とも呼ばれます。
五苓散は周期性嘔吐症によく効きます。 口から薬を服用させることは、嘔吐を逆に誘発する場合もあり、服用させるときは慎重にしてください。 小児科医のなかには五苓散を座薬にして使っている方もおられます。
筆者の長男が5歳のときこの病気になりました。 なんとなく今日は機嫌が悪いと思っていたら、 夕食時、突然食べたものを吐き出して、食卓を滅茶苦茶にしてくれました。 私や妻が怒るより前に、吐いた本人が驚いて泣き出しました。 食卓を片付け、周囲を掃除して本人をなだめすかすこと1時間あまり。 ようやく寝かせつけたと安堵すると、今度は布団の上へドドドッと噴水のように大量の嘔吐をしました。 飛び散った汚物を拭き取りながら、この薬のことをようやく思い出したのでした。 五苓散エキス剤1包をお湯約50mlに溶かして、さまして少しだけスプーンで一口飲ませてみました。 子供は「美味しい!」と言って、グイと一挙に飲み干しました。 また吐くのではないかとおそるおそる寝かせましたが、その晩、次の嘔吐はなく、1服でピタリと止まったのです。 ちなみに、長男が漢方薬を「美味しい」と言ったのは後にも先にもこのときだけです。 なお、五苓散を用いたが効果なく脱水症のために入院した事例が報告されております。 病状によっては小児科医に依頼することが肝要です。

さいごに

水毒を治療する漢方薬は五苓散以外にも多数あります。
花粉症の鼻水、慢性気管支炎の水様痰、関節炎による関節の腫脹、 これらも水毒による場合があり、それぞれ別の漢方薬が指示されています。機会あれば、またお話しいたしましょう。

⑨頭痛の漢方薬

はじめに

頭痛は私どもの日常臨床ではありふれた疾患ですが、重大な疾患が隠れているケースも多く、 CT、MRIなどの西洋医学的な診断を行い、脳腫瘍、髄膜炎、 血管炎などの西洋医学的な治療が必要な病気を見逃さないような注意が必要です。 これらの病気を否定されていて、痛みをくりかえすために、鎮痛薬を必要とする方が漢方薬の適応と考えています。

片頭痛と緊張型頭痛と薬物依存性頭痛

片頭痛は頭痛患者の3割を占めるとされます。 若い女性に多く、片側から始まり、拍動的に痛み、全体に広がります。 階段の昇降など日常的な動作によって悪化します。 前兆がある場合は、「きらきらするような星のような模様」あるいは「稲妻のようなギザギザ」が見えたりします。 片頭痛の診断には国際頭痛学会の診断基準が用いられています。
前兆のない場合の要点としては、

  1. 生活に支障を生じる程度の強い痛みがある
  2. 発作的に生じ反復する
  3. 悪心を伴う
  4. 光過敏や音過敏があり、患者は外出を避け部屋を暗くしてじっとしている
  5. 頭痛は4~72時間持続する
  6. 過去6カ月以内に新規または異質の頭痛がないなど

-です。

片頭痛の治療には近年トリプタン製剤が有効ですが、この薬は基本的には症状を抑えるだけです。 漢方薬は発作の頻度を減少させる効果を有していると考えられます。 緊張型頭痛は患者の5割を占めています。 青壮年に多く、天気、疲労、仕事のストレスの影響が大きいタイプです。 痛みは圧迫してしめつけるようですが、通常は日常生活に支障をきたすほどではありません。
最近社会的に注目されているのは、薬物依存性頭痛です。 治療目的の薬でかえって頭痛をきたしている場合です。 トリプタン製剤や非ステロイド性抗炎症薬を頻用している患者さんに起こります。 これらの鎮痛薬をちょっとした痛みで服用したり、怖いので予防的に服用することで薬物依存を生じてしまうのです。

漢方治療例

症例1

56歳、女性。主訴、頭痛。

10年前交通事故にあい、以後こめかみを主とした頭痛がほぼ毎日続くということで、 市販の鎮痛薬を毎日服用してきました。頭痛は仕事中はそれほどではないが、暇になると痛みだして、 週末と夜に悪化し、天候に左右されやすく、人混みに出ると痛みました。11月に受診されました。
問診表では多くの愁訴がありました。 特に、汗は首から上にかく、げっぷや胸やけをきたしやすいという消化器症状が注目されました。
身長150cm、体重52kg、血圧正常。身体的に異常所見は認めません。
漢方医学的に診察しますと、腹の緊張はやや低下して、虚証(きょしょう)のタイプでした。 みぞおちに抵抗があり、胃腸の機能低下があると判断できました。 下肢の冷えは顕著でした。桂枝人参湯(けいしにんじんとう)エキスを処方しました。 食前にお湯にといて服用して頂きました。
3週後に再診されました。鎮痛剤の服用はなんと1回だけですみました。 その後、風邪をひいて、桂枝人参湯の服薬が中断されるときもありましたが、 頭痛は発現しませんでした。夜もよく眠れるようになりました。
調子がよいため漢方薬の服薬も途絶えがちになりましたが、翌年の梅雨は再び頭痛が出現しました。 その後も漢方薬の服薬は週に1~4包服用にてよい状態にあります。鎮痛薬の依存状態から見事に脱することができたのです。
漢方医学では頭痛の患者さんに対して、胃腸の薬を用いることがたいへん多いです。
桂枝人参湯は胃腸を治す人参湯(にんじんとう)に頭痛を治す桂皮(けいひ)が加えられた漢方薬です。
人参湯の適応は胃腸が冷えて、食欲不振、下痢などの状態です。 構成生薬は人参、甘草(かんぞう)、乾姜(かんきょう)、朮(じゅつ)です。乾姜は生姜(しょうきょう)を蒸して乾燥させたものです。 生姜は温薬ですが、乾姜はより温める作用が強い熱薬とされています。 高齢者の方で唾液の泡を飛ばしながら話をしている方が時々おられますが、 漢方医学的には胃が冷えている病態と考え、人参湯を用います。 唾液の多い人に人参湯が効くことは、すでに2000年前の書物に記述されています。
この症例は元々は緊張型頭痛でしたが、経過の中で薬物依存性頭痛に変わってきたものと推測しています。漢方薬はこういうケースに誠によく効きます。

症例2

65歳、女性。主訴、のぼせ、頭痛。

5年前より降圧薬を服薬していました。3年前、脳MRIにて脳梗塞を発見されました。 最近は不眠のために睡眠薬も服用しています。本年1月頃からのぼせ、頭痛を自覚するようになりました。 頭痛は夕方悪化します。足が冷えて、手がしびれます。車を運転したり、座っていると背中が痛くなります。 便通は3日に1回で便秘傾向があります。
問診票では以下の症状がありました。 気分が優れない。気力がない。気分がいらいらする。両肩がこる。夜間尿。 寝つきが悪い。腰から下が冷える。冬は電気毛布、カイロなどが必要。夕方になると熱っぽい。 ぬるい風呂が好き。口内炎がよくできる。自分では完璧主義の方だと思っている。恐い夢を見る。 これらの症状よりうつ傾向が伺われました。
身長146cm。体重56kg。血圧143/65mmHgとやや高めです。心理テストでは不安が強く、 自己主張が弱く、周囲にあわせようとする傾向が顕著でした。 漢方医学的には、比較的がっちりした体躯で、実証(じっしょう)のタイプでした。 赤ら顔で、冷えはなく、体の内に熱のこもった病態が考えられました。
三黄瀉心湯(さんおうしゃしんとう)を処方しました。 そして、周りの人のことをあまり気にしすぎないで、自分を出すよう促しました。
2週後。のぼせ感は軽快しました。頭痛はズキンズキン痛みますが、軽減していて、我慢できないほどではなくなりました。 また周りのことを気にしないでやると楽だとわかったそうです。表情が和らいでいました。

4週後。頭重感はとれませんが、頭痛、のぼせは軽快しました。不眠、夢見はまだありました。便通は毎日1回あります。
8週後。調子がよいので、三黄瀉心湯を休んだところ、再びのぼせ感と頭痛がきました。 服用を続けています。睡眠薬はないと熟睡できないので続けています。
三黄瀉心湯は大黄(だいおう)、黄連(おうれん)、黄?(おうごん)の三味より構成された漢方薬です。 このお薬は、赤ら顔、肥満、高血圧、便秘の方に用います。気分を鎮め、便通をつけてくれます。
三黄瀉心湯は、通常はエキス製剤として用いられていますが、 この症例に用いた「ふりだし」が最も良く効く服用方法とされています。 具体的には、熱湯に浸して5分ほどであげて服用します。 インスタント煎じ薬のような服用方法です。湯に浸している時間はわずかですが、煎じ液は真黄色になります。
黄連は、たいへん苦いことで知られていますが、合う人はこの苦味が心地よく感じます。 胃薬でもあります。大黄は下剤ですが、向精神作用を有しています。 三黄瀉心湯はかつて、戦地に赴く兵士の気分を鎮めるために用いられたそうです。 それだけ向精神作用が強力なのだと思われます。 この症例は、主訴は頭痛ですが、うつ状態の合併を考えています。 頭痛といっても、病態によってその治療はいろいろなのです。

さいごに

「たかが頭痛、されど頭痛」。
頭痛は患者本人にとっては、苦痛の甚だしい、困った病気です。 無闇に鎮痛薬を服薬すべきではありません。医師、薬剤師にご相談ください。漢方薬の相談者としては、頭痛を理解している漢方専門医をお勧めします。

⑩みかんを用いた漢方薬(~陳皮と枳実~)

1)陳皮(ちんぴ)

皆様おなじみの、ウンシュウミカン(温州みかん)の皮を用います。 「温州」はみかんの栽培で有名な中国淅江省温州のことですが、品種そのものと直接の関係はないそうです。 日本産であっても「パリ○○」と名付けて商品価値を高めるネーミングの類だったのでしょうか。
ウンシュウミカンの皮は新鮮なものを橘皮(きっぴ)、古くなったものを陳皮(ちんぴ)、 未熟なウンシュウミカンの皮を青皮(せいひ、じょうひ)と呼んで、使い分けがされています。 皮の色は橙色ですが、古くなると黒褐色になります。橘皮は胸の中のつまりをとります。 陳皮は健胃作用が強く、体力のやや衰えた人の胃を強めるのに役立ちます。 また痰をとります。青皮は気を強力にめぐらします。 漢方薬の7割は中国等外国からの輸入ですが、陳皮だけは国産で、東南アジアへ輸出もしています。
陳皮の主成分のヘスペリジンには、芳香、苦味健胃、鎮咳作用があります。 その他にも、胃液分泌促進、抗アレルギー作用、抗炎症作用、気管支収縮抑制作用、鎮静作用も認められています。 食べる時には何の価値もなさそうな皮に、このように多くの作用があることに驚かされます。
陳皮を含む漢方薬、神秘湯(しんぴとう)はしつこい咳嗽があって、季肋下に張った感じのある症例に用います。 一例ご紹介いたしましょう。
41歳の女性です。昨年末より咳が続くため、ある総合病院内科に通院していました。 喘息ですが、アレルギーの原因は不明と言われました。気管支拡張薬、去痰薬、鎮咳薬が処方されてきましたが、効きません。 吸入ステロイド薬にも反応しませんでした。 本年6月の検査成績では白血球5,200/㎜3ですが、アレルギー反応を示唆する好酸球数10.7%と軽度上昇していました。親戚の勧めにて9月中旬に当センターを受診されました。咳が出て、痰が胸につまった感じがして苦しく、夜横になると息苦しいと訴えていました。
身長161cm。体重54kg。体温36.6度。血圧120/71mmHg。脈拍78/分、整。胸部の聴診では喘息を示すラ音等は聞こえません。
肺機能検査では、一秒率(一秒間に吐き出す息の量)は67.0%(正常70%以上)と低下していましたが、 気管支拡張薬吸入後75.4%へ上昇しました。喘息ですと15%以上の上昇がみられるので、喘息性気管支炎と考えました。
吸入ステロイド薬が効かなかったので、漢方薬だけで治療することにしました。 効果には個人差がありますので、効果を確認する目的で、外来にて神秘湯エキス2包を試服させてみたところ、 30分後には胸がすっきりして、咳が楽になりました。同包3包分3食前にて服薬を開始しました。
2週後。服薬1週後より夜間の咳は減少してきました。横になれない苦しさも減ってきました。
6週後。夜痰はでますが、咳はなくなりました。症状は随分楽になりましたが、服薬をさぼると咳が出てくるそうです。
神秘湯は、麻黄(まおう)、柴胡(さいこ)、杏仁(きょうにん)、厚朴(こうぼく)、陳皮、甘草(かんぞう)、 紫蘇葉(しそよう)の七味です。いずれも咳に効く生薬ですが、 麻黄のように胃にさわりやすい薬から胃を守る役割も陳皮にはあるようです。 名前が「神秘」なんてちょっと怪しく思われるかもしれませんね。この症例においてはまさに「神秘」のごとくよく効きました。 漢方薬はゆっくり効くイメージが一般には強いようですが、病の早期や症状の強い状態に用いるときは早く効くものです。

2)枳実(きじつ)

漢方薬ではナツミカンとダイダイの未成熟果実を枳実(きじつ)として用います。
ナツミカンは自然雑種によって生まれた日本原産の柑橘です。 安永年間(1772-1780)に山口県長門市の大日比に漂着したミカンの種子を西本於長(おちょう) が播き育てたのが最初と言われています。 その栽培は明治維新以降、旧士族の生計手段として山口県、特に萩の城下で広まったそうです。
ダイダイ(橙)はナツミカンに良く似ていて、同じミカン科に属しますが、果実は酸味が強すぎて食用には適さず、 お正月の飾りに使われます。年を越しても木になり続けることから「代々」の語源になったそうです。
枳実(きじつ)は気のうっ滞した状態を改善する目的で用いられます。 味は苦いのですが、便通を促進して腹の張りをとり、胸部の痛みと閉塞感を改善し、精神を安定させてくれます。 枳実のエキスには、腸管運動の抑制作用、抗アレルギー作用が認められています。
枳実を含む漢方薬、四逆散(しぎゃくさん)は緊張しやすい方の諸症状に有効です。たとえば、このような症例です。
53歳男性で、診断は過敏性腸症です。
20歳代より下痢しやすかったそうです。7年前、家族関係でストレスがあってから、 眠りにくくなり、些細なことで不安感にさいなまれてきました。 精神科クリニックにて抗うつ作用のあるスルピリド(50mg)1錠と抗不安作用のあるジアゼパム(2mg)1錠を処方されました。 4年前より尿の出が悪くなり、排尿後に残尿感が残り、小便ができらない感じがします。 泌尿器科医院を受診したところ、前立腺に異常なく、アビショット、ジスチグミンを服用すると尿の出方はやや良くなりました。
3年前当院の近くに単身で赴任して、より下痢回数が増加し、朝は平均3回性状は水様の場合が多くみられました。 近内科医院にて止痢剤(ポリフル)を処方され、1カ月分処方を3カ月かけて服用しています。 長時間の会議など、ストレスの多い前には必ず服用しています。
7月上旬に受診されました。
10年前より禁煙。平生はお酒を1~2合/日。
身長170cm。体重75kg。体温36.6℃。血圧129/85mmHg。脈拍数78/分、整。 脈は緊張良い。舌はややむくんでいました。 腹候、腹力は中等度よりがっちりしていてはっていました。手足のひらには汗があり、かきやすい傾向がありました。
四逆散エキス(煎じ薬を粉末にしたもの)を朝夕2回服用して頂きました。
1月後、1日5回あった下痢が1~2回に減りました。 それまで3日ごとに服用してきたセイロ丸を止めることができました。 2カ月後は、下痢は週1回に減りました。 以後はビールを多量に飲んだときや強いストレスの時だけ下痢するようになり、自信がでてきました。 腹の具合をみながら服用回数を調整しています。
四逆散は柴胡、枳実、芍薬、甘草の四味より構成されています。 柴胡は精神を安定化し、芍薬は腹痛、筋肉痛の痛みを抑え、甘草は症状の激しいときに用いられます。 四逆散は緊張しやすい方の腹痛、筋肉痛、便通異常によく効きます。 この症例はまさにストレスによって腹痛、下痢をきたしやすい、四逆散の典型的適応例といえましょう。

さいごに

漢方薬ではないミカンも重要です。 例えば、柚子(ゆず)です。冬至になると、お風呂に入れますが、心身面をリラックスさせる効果があります。 レモン、スダチ(酢橘)も仲間です。
みかんは皮も実も医食両用の重要な果実です。
なお、効くからには副作用もありえます。漢方では冷やす作用があると考えています。冷えやすい方は、ミカンで小便が近くなる場合があります。お気をつけください。

【文献】

原島広至:生薬単、NTS、東京、2007.
鈴木洋:漢方のくすりの辞典、医歯薬出版、東京.

>>漢方医から職場への処方箋 3へつづく