Q7-1.
産業医が、工場巡視中に作業環境を測定できるような簡易な測定器具(七つ道具)について、どのようなものがありますか。
使いやすく、かつコンパクトなものを紹介してください。
A7-1.
職業性疾病などの労働災害を予防するには、作業環境管理中の化学的因子や物理的因子など有害要因を測定し、そのデータの変動因子を明らかにして、変動因子をコントロールすることが大切です。
このため労働安全衛生法では、特定の有害因子について作業環境測定を義務づけていますが、これとは別に産業医が職場巡視中に行う測定も、作業場の現状を把握するという意味で重要です。
有害職場における職場巡視に有効で、操作が簡便で手軽に持ち運びが出来、かつ費用がかからない測定機器については、以下のようなものがあります。
- デジタル粉じん計
作業場の質量濃度変換係数(k値)が予め分かっている場合は、デジタル粉じん計で室内の気中粉じんの質量濃度の測定が可能です。 特に「光散乱式」の粉じん計は、高感度で扱い方も簡便で比較的小型軽量であることから、最も使用されている測定器です。但し、以下の測定器に比べ、若干高価です。
- スモークテスター(発煙管)
ゴム球を押すことにより、試薬(塩化第二スズ)を封入した発煙管から白煙を発生させると、白煙が気流にそって流れます。その動きを見ることにより、通風や換気の状況などを簡単に把握できます。
- 熱線式風速計
熱センサーを使用して、風があたったときのセンサー部の温度変化を抵抗値に変えて電気的に風速を測定します。 局所排気装置の吸引状態(制御風速)、ダクトの内部の風速・風量の測定、及び空調機の吹き出し口の風速測定などに利用されます。
- 検知管とガス採取器
検知管用ガス採取器(真空方式/内容積100mL)は、ピストンの原理を利用してガス検知管内に測定したいガスを通気させるための道具です。 検知管は、測定対象ガスと反応して変色する検知剤がガラス管内に充填されています。 検知管の両端を折り、ガス採取器に接続して検知管内に測定したいガスを一定量通気させると、測定したいガスと検知剤が化学反応を起し変色します。この変色した検知剤層の長さや変色の度合いから濃度を測定することができます。 対象ガスは、一酸化炭素や有機溶剤、ホルムアルデヒドなど約200種類、型式別には300種類以上あるとされています。
- 照度計
照度が不足していたり、照度がありすぎると誤認や作業効率の低下、疲労からくる視力の低下等を招く恐れがあります。 照度計は、その場所にどのくらいの光が当たっているかをLUX(ルクス)という単位を用いて数値で示し、それぞれの環境に合わせた照度を確保する目的で使用されます。ハンディタイプのものが多数でており、操作も極めて簡単です。
- 騒音計
騒音計は、無指向性マイクロホンで音圧を電気信号に変換し、聴感特性を補正する聴感補正回路を通して、その値をデシベル目盛りのメーターに表示するものです。 作業環境における騒音測定は
- 熱中症指標計
高温環境下での熱ストレスの指標として、WbGT(Wet-bulb Globe Temperature:湿球黒球温度(単位℃))が用いられます。WbGTは、人体の熱収支に影響の大きい気温、湿度、放射熱の要素を取り入れた指標ですが、熱中症指標計はこのWbGTを測定することができます。